親の財産、何を確認する?預貯金・保険・不動産の整理方法
この記事のポイント
- 最初に確認するのは「金額」ではなく「何が・どこにあるか」
- いちばんの手がかりは「郵便物」と「通帳の入出金」。定期的な引落・通知は契約が生きている印
- 本人に判断能力があるうちは、同意なく子どもが親の財産を動かすことはできない
親の財産を把握するとき、いきなり「いくらあるの?」と聞くとうまくいきません。子どもがまず確認しておきたいのは金額ではなく、「どんな財産が、どこにあるか」です。いざというときに家族が動けるよう、その一覧だけでも作っておきます。この記事では、財産7種類の手がかり、ネット銀行やマイナスの財産の見つけ方、判断力が落ちたあとに使える制度までを整理します。
まず「金額」より「存在と場所」
親が判断できるうちに、次のことが分かっていれば、あわてずに済みます。
- 通帳やキャッシュカードが何冊・何枚あるか
- どの金融機関と取引しているか
- 保険証券や不動産の権利証がどこにあるか
金額は、必要になったときに本人と一緒に確認すれば十分です。もしものあとで財産を調べるのは大変で、金融機関・法務局・年金事務所などを一つずつ回り、戸籍などの書類をそろえ、手数料もかかります。元気なうちに「場所」だけでも分かっていれば、この負担が大きく減ります。
確認したい7種類の財産と、手がかり
- 預貯金:通帳、キャッシュカード、ネットバンキングのアプリ、銀行からの郵便物
- 証券・投資信託:証券会社からの取引報告書、運用報告書、郵便物やメール
- 保険:保険証券、口座からの保険料の引き落とし、保険会社からの通知(→親の保険、何を確認する?)
- 不動産:権利証(登記識別情報)、毎年春ごろ届く固定資産税の納税通知書(→実家の名義と登記の確認)
- 年金:年金証書、ねんきん定期便、年金の振込通知
- 借入・負債:ローン契約書、毎月の返済の引き落とし、督促の郵便物、連帯保証の書類
- その他の契約:会員権、リース、サブスクなど定期的な支払い
ネット銀行・ネット証券は見つけにくい
紙の通帳や郵便物が届かないネット系の口座は、見落としがちです。
- スマートフォン・パソコンのアプリ、ブラウザのブックマーク、メールの受信箱を親と一緒に見る
- パスワードは聞かない。「どこの会社を使っているか」だけをメモする
- 会社名さえ分かっていれば、もしものときに家族が正規の手続きで照会できる
マイナスの財産こそ、早めに
借入や保証は、見落とすと相続の判断に直結します。
- 住宅ローン、自動車ローン、カードのキャッシング
- 誰かの借金の連帯保証人になっていないか
- 事業をしていた場合の買掛金や未払い
プラスの財産よりマイナスが大きいときは、相続放棄という選択肢もあります。その判断のためにも、借入は早めに把握しておきます。
「どこにあるか」だけを残す
情報整理シートやエンディングノートに、保管場所だけを書き出しておきます。「◯◯銀行の通帳は寝室のたんす上段」というレベルで十分です。金額や暗証番号は書きません。書いたものの置き場所も、家族の誰かと共有しておきます。
きょうだいとどこまで共有する?
全額を共有する必要はありません。大切なのは「誰が何を把握しているか」を家族の中で分かる状態にしておくことです。1人だけが情報を抱えると、あとで不信感につながります。きょうだいでの分け方は「親の介護、兄弟でどう分担する?」もあわせてご覧ください。
ここまでの要点
- 子どもが先に把握するのは「金額」ではなく「何が・どこにあるか」
- 手がかりは郵便物と通帳の入出金。定期的な引落・通知は契約が生きている印
- ネット系の口座は会社名だけメモ。パスワードは聞かない
- 借入・連帯保証は相続の判断に直結するので早めに確認する
親の財産を勝手に動かしてはいけない
親に判断能力があるうちは、本人の同意なく子どもが口座からお金を引き出したり、財産を処分したりすることはできません。「よかれと思って」でも、後で他のきょうだいとの間で問題になります。
判断力が落ちたあとに使える制度
「今のうちにもらっておく」の前に
「相続で揉めないよう、先に生前贈与を」と考える人もいますが、贈与税がかかる場合や、他の相続人との間で特別受益として調整される場合があります。安易に動かさず、税理士など専門家に相談してから判断します。
専門家・金融機関への相談が必要なケース
相続、不動産の名義変更、贈与や税金が関わる場合は、一般的な整理の範囲を超えます。税理士・司法書士・弁護士や、取引先の金融機関に相談してください。この記事で扱うのは、あくまで「家族が把握しておく」ための整理の考え方です。
よくある失敗
- 金額から聞いて警戒される:先に聞くのは「どこの・何」。金額は後回し
- ネット口座を見落とす:紙が来ないので、アプリとメールを一緒に確認する
- 借入・連帯保証を確認しない:相続放棄の判断ができなくなる
- 1人で情報を抱える:きょうだいに「誰が何を知っているか」だけは共有する
この記事のまとめ
- 最初に作るのは金額の一覧ではなく、「財産の種類と保管場所」の一覧
- 郵便物と通帳の入出金を見れば、財産の大半は洗い出せる
- ネット系は会社名だけ、マイナスの財産は早めに把握する
- メモには金額・暗証番号を書かず、置き場所を家族と共有する
- 親の財産は本人の同意なく動かせない。制度の利用は専門家に相談する
この記事の内容を、手を動かして整理できます。
情報整理シートにまとめるよくある質問
- 親にお金の話を、どう切り出せばいいですか?
- 「いくらあるの?」と金額から入るとうまくいきません。「もしものとき、どこの銀行に連絡すればいいか分からないと家族が困るから、金融機関の名前だけ教えて」と、目的と範囲を限定して伝えます。金額の中身は聞かない、と最初にはっきりさせると応じてもらいやすくなります。
- 金額まで聞いておくべきですか?
- 子どもが最初に把握すべきは金額ではなく「どんな財産が、どこにあるか」です。金額は、介護費用の見通しを立てるときや相続が具体的になったときに、本人と一緒に確認すれば十分です。無理に総額を聞き出そうとすると、かえって警戒されて「場所」も教えてもらえなくなります。
- ネット銀行やネット証券は、どうやって把握すればいいですか?
- 紙の通帳や郵便物が届かないため、スマートフォンやパソコンのアプリ、ブックマーク、メールの受信箱を親と一緒に確認するのが確実です。パスワードは聞かず、「どこの会社を使っているか(会社名)」だけをメモします。会社名が分かっていれば、もしものときに家族が正規の手続きで照会できます。
- 親の借金も調べたほうがいいですか?
- はい。住宅ローン、カードのキャッシング、連帯保証などのマイナスの財産を見落とすと、もしものときに相続放棄をするかどうかの判断ができません。ローン契約書、毎月の返済の引き落とし、督促の郵便物が手がかりです。必要なら信用情報機関への開示請求もできます。
- 親の判断力が下がったら、子どもが代わりに口座を管理できますか?
- 本人に判断能力があるうちは、同意なく子どもが引き出し・解約・処分をすることはできません。判断能力が低下した場合は、成年後見制度(法定後見)を利用することになります。元気なうちであれば、任意後見契約や家族信託であらかじめ管理を託しておく方法もあります。いずれも費用と手間がかかるため、司法書士・弁護士に相談してください。
参考にした情報
- 不動産登記(登記事項証明書の取得) (法務省・法務局)
- ねんきん定期便・年金記録 (日本年金機構)
- 相続税・贈与税のあらまし (国税庁)