親の通帳は何を確認する?子どもが知っておきたいポイント
この記事のポイント
- 通帳そのものを預かるより、まず「口座の一覧」を作る
- 口座は判断能力の低下を銀行が察知した時点で凍結される。診断書は不要
- 元気なうちなら、予約型の代理人サービスや任意後見などで備えられる
「親の通帳、何を見ておけばいい?」という疑問には、はっきりした答えがあります。通帳を預かることが目的ではなく、「どの銀行に口座があるか」「毎月お金がどう動いているか」を家族が把握しておくことが目的です。金額を写す必要はありません。この記事では、通帳で見ること、口座が凍結される仕組み、元気なうちにできる備えまでを整理します。
通帳で確認したい6つのこと
親と一緒に通帳を開いて、次のことを確認します。
- 金融機関:銀行名・支店名(複数ある場合はすべて)
- 口座の種類:普通・定期・積立など
- 定期預金の有無:満期の時期
- 毎月の引き落とし:公共料金、保険料、ローン、サブスクなど
- 年金の入金:偶数月に入っているか、金額の目安
- 長く動いていない口座:10年以上入出金がないと「休眠預金」として扱われる(引き出せるが手続きが要る)
使っていないサービスの引き落としが見つかったら、この機会に解約を検討します。
通帳そのものより「口座の一覧」を作る
「◯◯銀行(普通)」「△△信用金庫(定期・来年3月満期)」のように、口座の一覧を情報整理シートに書き出しておきます。暗証番号やキャッシュカードの番号は書きません。一覧があれば、いざというときに家族が金融機関に問い合わせできます。
口座は「凍結」される ― いつ、何がきっかけか
介護費用や施設代を親の口座から払おうとした矢先に凍結される、というのがよくある困りごとです。
凍結される前にできること
元気なうちなら、次のような備えがあります。銀行によって用意している仕組みが違うので、まず取引店に聞きます。
- 予約型(指定)代理人サービス:元気なうちに代理人を登録しておくと、後で本人の判断力が下がっても、代理人が生活費などを引き出せる。無料の銀行もあり、まず検討したい選択肢
- 代理人カード:日常の入出金に使える。ただし本人が認知症と判断されると停止する
- 任意後見契約:公正証書で結んでおき、判断力低下後に家庭裁判所が監督人を選任。初期費用は数万円程度
- 家族信託:不動産を含めて柔軟に管理できるが、初期費用が数十万円かかることが多い
選ぶ軸は、対象にしたい財産の範囲・費用・途中でやめられるかの3つです。いちばん手厚い方法が正解とは限りません。守りたい範囲に費用が見合うかで選びます。
凍結された後は「成年後見」
判断能力が低下したあとは、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらうのが原則です。申立てから選任まではおおむね1〜2か月(事案により長引くこともあります)。弁護士・司法書士などの専門職が後見人になると、月数万円の報酬が続くことがあります。いったん始めると原則やめられないため、利用前に専門家とよく相談します。
日常の生活費の引き出しについて
全国銀行協会は、本人のための支払いに限って、家族が代わりに預金を引き出すことに応じる方向の考え方を示しています。ただし実際の対応は銀行・支店で差があり、「本人のための支出だと分かる資料」を求められることもあります。まずは取引店に事情を相談してください。
ここまでの要点
- 通帳で見るのは金額ではなく「どの銀行か」「お金がどう動いているか」
- 口座は判断力の低下を銀行が察知した時点で凍結される(診断書は不要)
- 元気なうちなら予約型代理人サービスや任意後見などで備えられる
- 凍結後は成年後見が原則。時間も費用もかかる
親の通帳を子どもが預かってもいい?
親に判断能力があるうちは、本人の同意があっても、子どもが勝手に引き出すことはできません。預かる場合も、いつ・いくら・何のために動かしたかを記録に残します。きょうだいがいるなら、その記録を共有しておくと、後々のトラブルを防げます。
やってはいけないこと
- 本人に無断でお金を引き出す
- 家族に知らせず、1人で通帳を管理し続ける
- キャッシュカードの暗証番号をメモに残して保管する
「家族が困らないため」という目的を親と共有したうえで、開かれた形で進めます。
よくある失敗
- 金額を写すことに時間をかける:把握すべきは銀行名とお金の流れ
- 凍結の仕組みを知らずに先送りする:介護費用を払う直前に止まって困る
- 暗証番号の共有で済ませる:凍結・死亡後は使えず、リスクだけ残る
- 1人で通帳を管理し続ける:きょうだいに記録を共有しておく
この記事のまとめ
- 通帳では「銀行名・口座の種類・お金の流れ」を確認し、一覧にする
- メモに金額・暗証番号は書かない。置き場所は家族と共有する
- 口座は判断力低下を察知された時点で凍結される
- 元気なうちに、予約型代理人サービスや任意後見などを取引店に相談する
- 凍結後は成年後見が原則。日常の引き出しはまず取引店に相談する
この記事の内容を、手を動かして整理できます。
情報整理シートに記録するよくある質問
- 親の通帳、金額まで書き写しておくべきですか?
- 必要ありません。子どもがまず把握するのは「どの銀行に口座があるか」「毎月お金がどう動いているか」です。金額は、介護費用の見通しを立てるときや相続が具体的になったときに、本人と一緒に確認すれば十分です。メモには金融機関名と口座の種類だけを残し、暗証番号やカード番号は書きません。
- 認知症になると、口座はすぐ凍結されますか?
- 診断がついた瞬間に自動で止まるわけではありませんが、銀行が「本人の判断能力が下がっている」と察知した時点で凍結されます。窓口で本人が受け答えできない、家族が代わりに説明する、といった場面がきっかけになります。凍結されると出金・振込・定期預金の解約などができなくなります。
- 代理人カードがあれば、凍結されても引き出せますか?
- 代理人カードは日常の入出金には便利ですが、本人が認知症と判断されると使えなくなります。凍結後も家族が動けるようにしたいなら、元気なうちに登録する「予約型(指定)代理人サービス」や、任意後見契約・家族信託を検討します。銀行によって用意している仕組みが違うため、取引店に確認してください。
- 親のキャッシュカードの暗証番号を教えてもらってもいいですか?
- 本人の同意があっても、無断で引き出すことはできません。暗証番号を聞いても、本人が亡くなったり口座が凍結されたりすれば使えなくなり、メモに残すと不正利用のリスクもあります。番号を共有するより、後述の代理人サービスなど正規の仕組みで備えるほうが安全です。
- すでに親の判断力が下がっています。もう対策できませんか?
- 予約型代理人サービスや任意後見・家族信託は、本人が手続きの内容を理解できるうちにしか始められません。判断能力が低下したあとは、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらうのが原則の方法になります。まずは取引先の金融機関と、地域包括支援センターや司法書士に相談してください。
参考にした情報
- 金融取引の代理等に関する考え方(高齢者の預金引き出し) (全国銀行協会)
- 成年後見制度 (法務省)
- 地域包括支援センター (厚生労働省)