介護への備え

親の介護はいつから準備する?元気なうちに確認したいこと

この記事のポイント

  • 準備の中心は「手続き」ではなく「情報を集めておくこと」。今すぐ動く必要はない
  • 始めどきは年齢より「サイン」。生活の変化が複数続いたら情報収集を始める
  • 確認するのは親の希望・住まい・医療・家族・お金の5項目。困ったらまず地域包括支援センター

親の介護は、ある日きっかけ(転倒、入院、物忘れの進行など)とともに急に始まることが多いものです。そのとき慌てないために、元気なうちにやることは「手続き」ではなく「情報を集めておくこと」です。今すぐ申請や契約をする必要はありません。この記事では、準備を始めるサイン、確認する5項目、介護保険を使うまでの流れ、費用の目安、住まいの選択肢、仕事との両立までを整理します。

準備の中心は「情報を集めること」

要介護の状態になると、本人の希望を細かく聞くのが難しくなります。判断できるうちに「どこで、どんなふうに過ごしたいか」を聞いておくと、いざ介護が始まったとき、家族が方針で迷わずに済みます。準備とは、その「聞いておく」「調べておく」を少しずつ進めることです。

いつから始める? ― 年齢より「サイン」で判断する

目安として、親が75歳前後になったら意識し始めます。実際に要介護認定を受けるのは80代が中心ですが、個人差が大きいので、年齢そのものより生活の変化を見ます。

次のような変化が複数、続けて見られたら、情報収集を始める合図です。

  • 歩き方が変わった、つまずきやすくなった
  • 料理・掃除・洗濯の手が止まる、部屋が片付かなくなった
  • 同じ話を繰り返す、約束や予定を忘れる
  • 薬の飲み忘れが増えた
  • 身だしなみに構わなくなった
  • 外出や人づきあいが減った

元気なうちに確認したい5項目

  1. 親の希望:在宅で過ごしたいか、施設も選択肢に入れるか
  2. 住まい:今の家で暮らし続けられるか(段差、風呂、トイレ、階段)
  3. 医療:かかりつけ医、持病、飲んでいる薬(お薬手帳の場所)。まとめ方は「親の医療情報のまとめ方」へ
  4. 家族:きょうだいそれぞれが、どこまで・どんな形で関われるか
  5. お金:年金・預貯金と、介護にあてられる費用の見通し

この5つがざっくり分かっていれば、介護が始まったときの初動がまったく変わります。何を聞けばいいか迷ったら「親と終活の話をするときに聞いておきたい30の質問」を使ってください。

介護はどんなきっかけで始まるか

介護が必要になる主な原因は、認知症、脳卒中などの脳血管疾患、骨折・転倒、加齢による衰弱です。男性は脳卒中のように突発的に始まることが多く、女性は認知症のようにゆるやかに進むことが多いといわれます。どちらにしても「まだ元気だから」と情報収集を先送りにすると、始まったときに選択肢を選ぶ時間がありません。

介護保険を使うまでの流れ

介護が現実になったら、次の順で進みます。

  1. 地域包括支援センターに相談:親の住む市区町村の窓口。何から始めるかを教えてくれる
  2. 要介護認定を申請:市区町村の窓口へ。本人・家族のほか、地域包括やケアマネジャーが代行することもできる
  3. 認定調査と主治医意見書:調査員が自宅を訪問。かかりつけ医が意見書を作成する
  4. 認定結果が届く:非該当/要支援1〜2/要介護1〜5に区分される(申請から1か月程度)
  5. ケアプランの作成:ケアマネジャー(要支援は地域包括)と、使うサービスを決める
  6. サービス利用開始

各ステップの詳しいやり方(申請書類、認定調査で家族がすること、区分と自己負担、使えるサービス)は「介護保険の申請と使い方」にまとめています。

お金の目安

生命保険文化センターの調査では、介護にかかる費用と期間の平均は次のようになっています。

  • 一時的な費用(住宅改修・介護用ベッドなど):平均で数十万円
  • 月々の費用:平均8〜9万円程度(在宅は5万円前後から、施設に入ると10万円超が多い。低所得なら補足給付で下がることも)
  • 介護期間:平均5年ほど

(金額は生命保険文化センターの2021年の調査による目安です)

住まいの選択肢をざっくり知っておく

「在宅か施設か」だけでなく、施設にも種類があります。月額の目安とあわせて、早めに知っておきます。

  • 在宅介護(月5万円前後〜):住み慣れた環境。家族の支援が見込める場合向き
  • 特別養護老人ホーム(月9〜15万円程度):原則要介護3以上。費用は抑えめだが待機者が多い
  • 介護付き有料老人ホーム(月15〜30万円以上):サービスが手厚い。費用の余裕が必要
  • サービス付き高齢者向け住宅(月10〜25万円程度):自由度が高い。重度化すると住み替えが必要なことも

一人暮らしの親をどう支えるか、いつ住み替えを考えるかは「親の一人暮らし、いつまで大丈夫?」で扱っています。

仕事と両立する制度

介護離職はその後の生活への影響が大きいため、まず勤務先の制度を使います。

  • 介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割可。雇用保険から給付金(賃金の約67%)
  • 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら10日)、時間単位でも取得可能
  • 残業の免除・短時間勤務など:申し出により利用できる場合がある

賃金の扱いは会社の規定によります。まず人事に確認してください。遠方から介護する場合は「遠方に住む親の介護、何を準備する?」もあわせてご覧ください。

ここまでの要点

  • 準備=手続きではなく「聞いておく・調べておく」を少しずつ進めること
  • 始めどきは年齢より「サイン」。生活の変化が複数続いたら情報収集を始める
  • 相談の入り口は地域包括支援センター。介護保険は申請から認定まで1か月程度
  • 費用は平均で月8万円前後・期間5年ほどだが、幅が大きい

困ったときの相談先

介護について困ったら、まず住んでいる市区町村の地域包括支援センターに相談します。高齢者の暮らし全般の相談窓口で、介護保険の申請やケアマネジャー選びの案内もしてくれます。名称や場所は自治体で異なるため、「(自治体名)地域包括支援センター」で調べるか、役所の高齢福祉の窓口で確認してください。

親の近くに住んでいない場合

遠距離でも、情報を集める・家族間の連絡役を担う・書類やオンラインの手続きを引き受けるなど、できることは多くあります。近くに住むきょうだいに実務が偏らないよう、早い段階で役割を話し合っておきます。

きょうだいがいるなら、先に役割を話す

介護が始まってから分担を決めると、なんとなく近くの人に集中しがちです。始まる前に「誰が家族の窓口(キーパーソン)か」「緊急時に誰がまず動くか」だけでも決めておきます。くわしくは「親の介護、兄弟でどう分担する?」、話し合いの場の持ち方は「家族会議の進め方」で解説しています。

認知症が進む前に検討すること

判断能力が下がると、親名義の口座からお金を引き出したり、実家を売ったりする手続きができなくなります。

よくある失敗

  • 「まだ元気だから」と情報収集を先送りにする:突発的に始まると選ぶ時間がない
  • 地域包括支援センターを知らないまま抱え込む:最初の相談先を先に調べておく
  • 本人の希望を聞かずに子どもだけで方針を決める:後で「勝手に決めた」と揉める
  • 仕事との両立制度を調べず、いきなり離職を考える:まず勤務先の休業・休暇制度を確認

この記事のまとめ

  • 準備の中心は「情報を集めておくこと」。今すぐの手続きは不要
  • 始めどきは年齢より「サイン」。生活の変化が複数続いたら動き出す
  • 親の希望・住まい・医療・家族・お金の5項目を、元気なうちに把握する
  • 相談の入り口は地域包括支援センター。介護保険は申請から認定まで約1か月
  • 費用と住まいの選択肢は幅があるので、早めに調べておく
  • 仕事は辞める前に、介護休業・介護休暇などの制度を使う

この記事の内容を、手を動かして整理できます。

会話チェックリストで確認する

よくある質問

親はまだ元気です。今から準備できることはありますか?
あります。手続きは不要ですが、「親の希望・住まい・医療・家族・お金」の5項目をざっくり把握しておくこと、地域包括支援センターの場所を調べておくこと、きょうだいで役割を話しておくことは、元気なうちだからこそできる準備です。判断能力が下がってからでは本人の希望を確認できません。
介護保険は誰でも使えますか? いつ申請しますか?
65歳以上(第1号被保険者)で、要支援・要介護の認定を受けた人が使えます(40〜64歳でも特定の病気が原因なら対象)。申請は、生活に支障が出てきた・退院後に支援が必要、といったタイミングで、親の住む市区町村の窓口か地域包括支援センターで行います。申請から認定まで1か月程度。認定調査で家族がすべきことや使えるサービスなど、手続きの詳しい進め方は別記事「介護保険の申請と使い方」にまとめています。
介護にはいくらかかりますか?
生命保険文化センターの調査(2021年)では、介護の一時的な費用の平均が数十万円、月々の費用の平均が8〜9万円程度、介護期間の平均が5年ほどとされています。ただし要介護度・地域・所得(自己負担は1〜3割)で大きく変わり、低所得の場合は施設費用が補足給付で下がることもあります。在宅は月5万円前後から、施設に入ると10万円を超えることが多い、という幅で考え、実際の見込みはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。
在宅介護と施設、どちらがいいですか?
一概には言えません。最優先は親本人の希望で、そのうえで「在宅なら誰がどれだけ関われるか」「施設なら費用をどう賄うか」を現実的に確認します。在宅は住み慣れた環境で費用も抑えやすい一方、家族の負担が大きくなりがちです。特別養護老人ホームは原則要介護3以上が対象で待機者も多いため、選択肢は早めに調べておきます。
仕事を辞めずに介護できますか?
できます。介護離職はその後の生活への影響が大きいため、まず勤務先の制度を使います。育児・介護休業法により、対象家族1人につき通算93日まで(3回まで分割可)の介護休業、年5日(2人以上なら10日)の介護休暇があり、介護休業中は雇用保険から給付金(賃金の約67%)が出ます。残業免除や短時間勤務を利用できる場合もあります。

参考にした情報

  • 地域包括支援センター (厚生労働省)
  • 公的介護保険制度の現状と今後の役割 (厚生労働省)
  • 生命保険に関する全国実態調査(介護費用・介護期間) (生命保険文化センター)
  • 育児・介護休業法(介護休業・介護休暇) (厚生労働省)