エンディングノートに何を書く?選び方と、親に書いてもらうコツ
この記事のポイント
- エンディングノートは「家族が困らないための情報」+「思い」を1冊にまとめるもの。法的効力はない
- 口座番号・暗証番号・パスワードそのものは書かない。「どこにあるか」まで
- 全部埋めなくていい。連絡先と書類の場所だけでも価値がある
エンディングノートは、「家族が困らないための情報」と「伝えておきたい思い」を1冊にまとめるものです。書き方に決まりはなく、法的な効力もありません。だからこそ気負わずに始められますが、いくつか押さえておくと役立つポイントがあります。この記事では、書く項目、書かないほうがいいこと、ノートの選び方、親に書いてもらうときの進め方を整理します。
エンディングノートは何のためのもの?
大きく2つの役割があります。
- 情報の引き継ぎ:連絡先、かかりつけ医、お金や書類の在りか、契約しているサービスなど、もしものときに家族が必要とする情報
- 思いを伝える:介護や延命治療の希望、葬儀の希望、家族へのメッセージ
前者は「家族の実務の負担を減らすため」、後者は「本人の意思を残すため」のものです。どちらも、書いておけば残された家族が迷わずに済みます。
遺言書との違い
エンディングノートと遺言書は、役割がまったく違います。
| エンディングノート | 遺言書 | |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり |
| 書ける内容 | 自由 | 相続の分け方や子の認知など、民法で定められた事項 |
| 費用 | 数百円〜千円台 | 自筆は0円、公正証書は数万円〜 |
| 主な目的 | 情報の共有・思いを伝える | 財産の分け方を法的に決める |
何を書く?(分野別)
「親と終活の話をするときに聞いておきたい30の質問」や「親の情報整理シート」と同じ並びで整理すると、迷いません。
- 基本情報:住所、本籍地、緊急連絡先
- 医療・介護:かかりつけ医、持病、薬、介護の希望、延命治療の希望
- 生活:日常で困っていること、ペットの世話
- お金:取引のある金融機関、年金の種類、加入している保険(※金額は書かなくてよい)
- 重要書類の場所:通帳・印鑑・保険証券・年金手帳・権利証・実印
- デジタル:使っているスマホの会社、よく使うサービス、有料サブスク(→親のスマホとデジタル遺品)
- 葬儀・お墓:希望する形式、お墓の場所、連絡してほしい人
- 家族へのメッセージ:伝えておきたいこと(書きたくなったときで十分)
情報整理シートは、このうち事務的な部分だけを抜き出したものです。ノートを1冊書くなら、シートは無理に併用しなくてかまいません。
書かないほうがいいこと
ノートの選び方
- 市販のノート(数百円〜千円台):項目が細かく用意され、何を書くか迷わない。書店・文具店・通販で手に入る
- 自治体が配布しているもの:無料。役所の窓口や地域包括支援センターで配っていることがある。項目が絞られていて始めやすい
- アプリ・パソコンで作る:更新しやすいが、家族が見られる方法を決めておく必要がある
- ノートに抵抗があるなら:まず「親の情報整理シート」の事務的な項目から
書くことが負担に感じるなら、項目の少ないものを選び、埋まらない欄は空けたままでかまいません。
親に書いてもらうときのコツ
「書いておいて」と渡すだけでは、たいてい進みません。
- 子どもが先に自分の分を少し書いて、「書き方が分からないから見て」と相談する形にする
- 一緒に1項目だけ書く(まず「緊急連絡先」)
- 全部を求めない。「連絡先」と「書類の場所」だけでも十分に価値がある
いつ書く・どう見直す
いちばん進めやすいのは、親が元気で、自分の希望をはっきり書けるうちです。判断能力が下がってからでは、本人の意思を反映できません。
書いたあとも、内容は変わります。年1回(誕生日など日を決めて)見直すと決めておくと、口座・薬・連絡先の情報が古くならずに済みます。
書いたあと ― 保管と共有
ここまでの要点
- エンディングノートに法的効力はない。財産の分け方は遺言書で
- 書くのは情報の在りかと思い。まず「連絡先」「書類の場所」から
- パスワード・口座番号そのものは書かない
- 元気なうちに書き、年1回見直し、保管場所を家族に伝える
よくある失敗
- 相続の希望をノートに書いて安心する:法的効力はない。遺言書が別に必要
- 全部埋めようとして挫折する:連絡先と書類の場所だけでも十分
- パスワードを書き込む:紛失・盗難時のリスク
- 書いたことを誰にも言わない:存在と保管場所を家族に伝える
この記事のまとめ
- エンディングノート=家族が困らないための情報+思いをまとめる1冊
- 遺言書とは別物。財産の分け方を決めたいなら遺言書を用意する
- 書く項目は情報整理シート・30の質問と同じ並びで考えると迷わない
- ログイン情報は書かず、元気なうちに書いて年1回見直す
- 保管場所を家族に伝えておく
この記事の内容を、手を動かして整理できます。
情報整理シートにまとめるよくある質問
- エンディングノートに書いたことは、遺言書の代わりになりますか?
- なりません。エンディングノートに法的効力はないため、「この家は長男に」と書いても、そのとおりに相続されるとは限りません。財産の分け方を決めておきたい場合は、別に遺言書(自筆証書または公正証書)が必要です。エンディングノートは、遺言書の有無と保管場所を書いておく場所、と考えるとよいです。
- 何から書けばいいですか? 全部埋めないとダメですか?
- 全部埋める必要はありません。まず埋めたいのは「緊急連絡先」「かかりつけ医」「通帳・保険証券・権利証などの保管場所」です。この3つがあるだけで、もしものときの家族の動きは大きく変わります。思い出や気持ちの欄は、書きたくなったときで十分です。
- パスワードや口座番号も書いておくべきですか?
- 書きません。ノートを紛失・盗難したときに悪用される危険があります。書くのは「どの銀行か」「スマホでどのサービスを使っているか」までにとどめ、ログイン情報そのものは別の安全な方法で管理します。
- 市販のノートと、自治体でもらえるものはどう違いますか?
- 市販品(数百円〜千円台)は項目が細かく用意されていて、何を書けばいいか迷いません。自治体が配布しているものは無料で、必要な項目に絞られていることが多く、役所の窓口や地域包括支援センターで手に入ることがあります。書くことが負担なら、まず項目の少ないものから始めます。
- 親がエンディングノートを書いてくれません。
- 「書いておいて」と渡すだけでは進みません。子どもが先に自分の分を少し書いて「書き方が分からないから見て」と相談する、一緒に1項目(まず連絡先)だけ書く、といった形にすると動きやすくなります。強く拒むときは「親が終活を嫌がるのはなぜ?」も参考にしてください。
参考にした情報
- 自筆証書遺言書保管制度 (法務省)
- 「人生会議」してみませんか(医療・ケアの希望の話し合い) (厚生労働省)
- 地域包括支援センター (厚生労働省)