誰も住まなくなる実家、どうする?売る・貸す・保有の選び方
この記事のポイント
- 空き家の放置がいちばん損。「特定空家」等に指定されると固定資産税が最大6倍になりうる
- 選択肢は売る・貸す・住む・解体・管理して保有の5つ。方針と期限をきょうだいで1つに決める
- 相続した実家を売るなら、3,000万円特別控除が使えるか売る前に税理士へ
親が施設に入る、あるいは亡くなるなどして実家に誰も住まなくなると、「この家をどうするか」という問題が残ります。選択肢は売る・貸す・住む・解体する・管理して保有するの5つ。いちばん避けたいのは、決めないまま放置することです。この記事では、放置のリスク、5つの選択肢の向き不向き、進める順番、税金の特例を整理します。
放置がいちばん損 ― 空き家を置いておくリスク
税金以外にも、雨漏り・シロアリ・倒壊、放火や不法侵入、庭木やごみによる近隣トラブル、そして資産価値の下落が進みます。人が住まない木造家屋は傷むのが早いため、時間が経つほど選べる道が狭くなります。
5つの選択肢と、向き・不向き
| 選択肢 | 向いているケース | 主な費用・注意点 |
|---|---|---|
| 売る | 使う予定がなく、現金化して負担から解放されたい | 仲介手数料、譲渡所得税(特例あり)。思い出の整理が要る |
| 貸す | 立地がよく、リフォームに投資できる | リフォーム費用、空室リスク、入居者・修繕対応 |
| 自分や親族が住む | 通える距離で、住み替えを考えている | 生活環境の変化、リフォーム費用 |
| 解体して更地 | 建物が傷みすぎ/売りやすくしたい | 解体費(木造で坪数万円〜)、更地は固定資産税が上がる |
| 管理して当面保有 | 方針が決まらない/将来使うかも | 定期的な通風・通水・草刈り、管理サービス代(月数千円〜) |
「管理して保有」は先送りに見えますが、期限(例:1年後の家族会議で決める)をセットにするなら現実的な選択肢です。
進める順番
- 相続登記を済ませる(2024年から義務。相続を知った日から3年以内)→「実家は誰の名義?」
- 残置物を片付ける(売却・賃貸の前提)→「実家を片付けるのはいつから?」
- 家族で方針を1つに決める(きょうだい全員で。方針+期限+費用の分け方)
- 不動産会社に複数社査定を依頼(貸すなら賃貸管理会社に相談)
- 税理士に「3,000万円控除が使えるか」を確認(売る場合)
相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した実家を売ったとき、譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上なら1人あたり2,000万円)を差し引ける特例です。
主な要件:
- 1981年5月31日以前に建てられた家屋
- 相続の直前に被相続人が1人で住んでいた
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
- 売却代金が1億円以下
- 一定の耐震改修をするか、建物を取り壊して売る(買主が翌年2月15日までに行う場合も対象)
使い道が決まらないとき
- 空き家バンク(自治体が運営する、売りたい人と買いたい人のマッチング)に登録する
- 相続土地国庫帰属制度:建物を取り壊したうえで、一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらう制度。負担金(最低20万円)が必要で、対象にならない土地も多い。手放す最終手段
- それまでは管理サービスで維持しつつ、「いつまでに決めるか」を家族で約束する
きょうだいで決めるときの注意
- 共有名義のまま放置しない。次の相続で権利者が増え、動かせなくなる
- 「誰も決めたがらない」がいちばん困る。方針と期限をセットにする
- 売却益・解体費・管理費の分け方を先に決める
分担でもめないための考え方は「親の介護、兄弟でどう分担する?」も参考になります。
ここまでの要点
- 空き家の放置は税・安全・資産価値のどれもマイナス。時間が経つほど不利
- 選択肢は売る・貸す・住む・解体・管理保有の5つ。期限つきで1つに決める
- 先に「相続登記→片付け」を済ませてから、査定・相談に進む
- 売るなら3,000万円特別控除の可否を、売却前に税理士へ
よくある失敗
- 方針を決めずに数年放置:傷みと税負担が進み、選べる道が減る
- 共有名義のままにする:次の相続で権利者が増えて詰む
- 1社だけの査定で決める:複数社に出すと数百万円変わることがある
- 控除を確認せず売る:3,000万円控除の要件を外して手取りが目減り
この記事のまとめ
- 誰も住まなくなったら、放置せず「売る・貸す・住む・解体・管理保有」から選ぶ
- きょうだい全員で、方針・期限・費用の分け方をセットで決める
- 先に相続登記と片付けを済ませる
- 売るなら、3,000万円特別控除が使えるか売却前に税理士に確認する
よくある質問
- 空き家を放置すると、税金が上がるというのは本当ですか?
- 本当です。市区町村から「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税の軽減(最大6分の1)が外れます。結果として固定資産税が最大で6倍になることがあります。指定されなくても、傷んだ家は資産価値が下がり続けます。
- 古い実家でも貸せますか?
- 貸せますが、ハードルは高めです。多くの場合、水回りや内装のリフォーム費用がかかり、それでも借り手がつかない空室リスク、遠方だと入居者対応や修繕の手配という負担が残ります。まずは地元の不動産会社(賃貸管理会社)に「この状態で貸せるか、いくらかかるか」を相談してから判断します。
- 実家の解体費用はどのくらいですか?
- 建物の構造・広さ・立地(重機が入れるか)で大きく変わりますが、木造住宅で1坪あたり数万円が目安です。30坪なら100万〜200万円程度になることもあります。解体して更地にすると、住宅用地の軽減が外れて固定資産税は上がる点にも注意します。必ず複数社から見積もりを取ります。
- 相続した実家を売ると、税金はかかりますか?
- 売却益(譲渡所得)に対して税金がかかりますが、一定の要件を満たせば「相続した空き家の3,000万円特別控除」で最大3,000万円(相続人が3人以上なら1人2,000万円)を差し引けます。要件は「1981年5月31日以前の建築」「被相続人が1人で住んでいた」「相続開始から3年を経過する年の年末までに売却」「売却代金1億円以下」「一定の耐震改修または取り壊し」などと細かく、当てはまるかで手取りが数百万円変わります。売る前に税理士に確認してください。
- きょうだいの共有名義のまま、持ち続けてもいいですか?
- おすすめしません。共有のまま放置すると、共有者の1人が亡くなったときにその持分がさらに相続され、権利者が雪だるま式に増えて、売ることも貸すこともできなくなります。当面保有するとしても、名義をどうするか、いつ見直すかを決めておきます。
次のステップ
参考にした情報
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(No.3306) (国税庁)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(特定空家・管理不全空家) (国土交通省)
- 相続土地国庫帰属制度 (法務省)